見落としがちな住民税100万円の壁。主婦の年収いくらがお得か考える

2012年12月29日土曜日

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夫婦2人で運営している事業者や共働き夫婦など、主婦(夫の年収のほうが少ない場合は主夫)の稼ぎをいくらまでにすべきか悩むケースがあるだろう。
主婦が働き過ぎると、稼ぎの大きい夫の年収を押し下げる要因となり、結果的に世帯での可処分所得が減る可能性があるからだ。

ボクは個人事業に毛が生えたくらいの小さな会社を運営しているのだが、まさに、この問題について考えたばかりだ。そして、失敗しかけたので、そのときに調べた内容をここに記録しておこうと思う。記録を残して、これから失敗しないように。また、同じ境遇の方の参考資料となるように。

実は、この件について、ネットを探しても意外に参考資料が少ないのだ。というのも、判断基準となる金額の境目が、地域にる例外があり、断定的な書き方がしにくいからだ。詳しく調べていないが、おそらく、かなりの割合の方が、今回書いたこの記事のケースにあてはまるはずだ。参考にして欲しい。

今回、考えるのは、夫婦そろって給与所得者の給与所得についてだ。利子所得がある場合などは考えない。また、生活保護を受けているなどの特殊なケースも考えない。ちなみに、パートやバイトでも給料としてもらうのは給与所得だ。

 まず、給与の手取りに関する基礎知識

いろいろと解説する前に、会社が支給する給与(額面)からどんな費用が差し引かれて手取りになるのか、本当にテキトーに解説する。

会社が支払う給与【A】は、一般的に保険の類【B】(国民健康保険や厚生年金保険、介護保険、雇用保険等)が差し引かれる。【A】-【B】=課税対象額【C】だ。この【C】に税金がかかる。
【C】から、所得税や住民税などを差し引いた金額が、給料の手取りだ【D】。

具体的なイメージだとこんなだ。(※あくまでイメージです。扶養者数や税金の控除金額により大きく異なります。)
月給40万くらいの給与の人は、2万円(約5%)の健康保険と3万2千円(約8.2%)の厚生年金が引かれて課税対象額が34万8千円。そこから、所得税と住民税、それぞれ1万円ずつかかり、32万8千円程度が手取りとなる。

 100万円の壁、103万円の壁、130万円の壁

主婦の給与所得を考えるときに、「103万円の壁」「130万円の壁」といったキーワードが使われる。「103万円の壁」とは、年収を103万円にするのか103万円超にするのかで大きな違いがあるので103万円が分かれ目となる「壁」と表現したものだ。「130万円の壁」も同様の考え方だ。

ボク自身がうっかり忘れていたのだが、「103万円の壁」「130万円の壁」の他に、もうひとつ「100万円の壁」がある。金額的には、けっこう低いので、他に比べると「低い壁」と言えるかもしれない。

では、それぞれの壁について解説する。
ちなみに、それぞれの壁に名称を付けるなら…「100万円の壁」は「(主婦自身への)住民税の壁」。「103万円の壁」は「夫の所得税控除(配偶者控除)の壁」。「130万円の壁」は「(主婦自身への)保険料の壁」だ。

 主婦の年収100万円、103万円、130万円だとどうなる?

(ちなみに、100万円の壁は、地域により、前後に動く。東京23区および千葉市などほとんどは100万円だと思うが、一部の地域では100万円以外のところもある。)

主婦が年収100万円または100万円以下を給与所得として受け取るとき、
現状、保険や所得税、住民税など、何もかからない。つまり、会社からの支給額【A】がまるまる手取り【D】となる。

主婦が年収100万円1円~103万円を給与所得として受け取るとき、
住民税がかかる場合が多い。
「住民税がかかる場合が多い」というやや曖昧な表現にしたのは、一部の地域では100万円が壁でないことがあるからだ。ただし、住民税がかかるといっても0.6%程度、つまり年6,000円程度と低い金額だ。100万円だとまるまる自分のものだが、103万円だと3万給与が増えるが6000円住民税で引かれて2万4千円程度所得増となる。どちらがいいかは判断が分かれる。とにかく、「壁」といっても低い壁だ。

なお、(個人)住民税に関する東京都主税局と千葉市のページは以下。
ここから、どうやって「100万円の壁」の「100万円」という金額が導き出せるかと言うと…上記いずれも非課税対象者は前年の所得金額が35万円以下との記述がある。また、給与所得者の場合は、給与所得控除があり(所得が給与所得の場合は特別にこの金額までは税金がかからないという特別枠)いずれも65万円。つまり、100万円の給与所得者は65万円の給与所得控除が受けられ課税対象金額が35万円。35万円までは住民税は非課税との規定があるので、1円も税金がかからないことになる。
この非課税対象者や給与所得控除の規定は地域により多少の差がある。それで「100万円の壁」が地域により「98万円の壁」になったりするのだ。

主婦が年収103万1円~129万9999円を給与所得として受け取るとき、
住民税の他に、主婦自身に所得税がかかる。(厳密には、夫の給与への影響もあるのだが、金額的にもたいしたものではないし、複雑になるので、この記事では無視する。)所得税は、控除できる項目が多いので130万円程度の年収ではたいしてかからない。「100万円の壁」よりは高いが、たいした高さの壁でもないと言える。

主婦が年収130万円以上を給与所得として受け取るとき、
年収130万円に達すると、とたんに、主婦自身に、各種保険【B】が適用になる。健康保険や厚生年金は、けっこうな金額になるので、給与所得130万円と129万9999円の差はひじょうに大きい。130万円ジャスト稼ぐのであれば、1円少ない129万9999円稼ぐほうが手取りはぜんぜんいい。ただ、130万円に達して差し引かれる金額は、保険料として差し引かれるわけだから、将来的には保険料の戻りとして掛け金が多いほどたくさんの金額がもらえる。将来的な保険の戻りのことまで考えると130万円か129万9999円か、どちらがいいのか、判断が分かれる。

 総括

夫婦で事業しているときの主婦や共働き主婦の年収をどうするか悩ましい問題ではある。
通常、「100万円までは、まるまる自分のもの」と覚えておこう。100万円を越しても税金はたいした金額にならない。ただ、ちょっとした収入増のために手続きが増えるのが面倒かもしれない。
103万と100万だったら103万稼ぐという選択肢もある。しかし、100万を数千円オーバーするかしないかの状況でバイトやパートを追加で増やすかどうか選択するなら、ボクだったら100万円以内にする。

「103万円の壁」はたいした高さじゃないので、無視してもいいかも。
ちなみに、ボーナスがないなら、月85,500円であれば12ヶ月で103万円をオーバーしない。月9万だと年収108万円になる。目安として再確認した。

「130万円の壁」は高い。たぶん毎月の手取りは実感できるくらいに下がるので越すなら計画的に。

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